この記事では、絵本作家のかこさとし(加古里子)さんが絵本を書き始めたのはなぜか、また、絵本に込め続けた子ども達へのメッセージを紹介します。
・かこさん、知ってる!からすのパン屋さんを書いた人でしょ?
・だるまちゃんの話、読んだことある!
きっと、もっともっとかこさんの絵本を読んでみたくなりますよ!
かこさとしの生い立ちと、絵本作家の誕生
1926年福井県生まれ。
子ども時代から絵を描くことが大好きな少年でした。
青春時代は、戦争時代。
航空士官を志そうとするも、視力低下により断念せざるをえなかったことから、
東京大学工学部へ進学します。
同世代が次々と戦死していく中、生き残っている自分に「生きる意味」を見失いました。
そして、終戦。
「天皇万歳!」と戦争を支持していた大人たちが、手のひらを返したように一斉に「民主主義」を唱え始めたことに強い違和感を持ち、失望したといいます。
「人間は嘘をついてはいけない。」
また、かつて軍人を志した自分への強い自責の念もありました。
「自分が誤った考えをした。それは、勉強が足りなかったからだ」と考えたのです。
そこから、「これからを生きる子ども達が、自分のような過ちを犯さないよう、賢く、健やかに育つ手伝いをしたい」と願うようになっていきます。
「子どもたちは、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し行動する賢さを持つようになってほしい。その手伝いをするのなら、死にはぐれた意味もあるかもしれない。」
『未来のだるまちゃんへ』(かこさとし)より
近所のボランティア福祉活動(セツルメント活動)に参加して、子ども会で、子ども達のためにたくさんの紙芝居等をつくったことがきっかけで、絵本作家の道を進んでいきます。
2018年5月に92歳で亡くなるまで、生涯600冊を超える作品を世に送り出しました。
ご冥福をお祈りいたします。
自分と同じような間違いをしないよう、自分たちの未来をこれから切り開いていこうとする子どもたちに希望を託した方だったんですね。

【ストーリー絵本】伝えたかったメッセージの数
かこさんは、とにかく子どもたちが遊びや絵本を通して、様々なことを学べるように考えていました。
①『わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』~みんな違ってみんな良い
タイトル:『わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』
内容:とても幸せで、とても音楽がすきな国がありました。それをうらやましがったアクマは、国中の楽器を盗んでしまいます。そこら辺にあるもので楽器を作っても盗られ、虫の声を楽しんでも盗られましたが、「歌があるさ」とめげずに歌いだし、アクマは目をまわしてしまい…。
この大騒ぎの絵、『わっしょいわっしょいのおどり』は1952年に発表されたセツルメントで大人気の紙芝居の絵が前身です。
中央のやぐらには「へいわまつり」と書かれています。たいこや笛を吹く人、踊る人、おじいさん、学生、動物たちが一緒になって踊る、そこにはやっぱりかこさんのメッセージがこめられていました。
「多用な人の共生共苦共楽」を示そうとしたといいます。
多用な人の共生共苦共楽。
かこさん作品には、絵の細部にまで、これを表現したものがとても多いです。
②『どろぼうがっこう』~ユニークで楽しいどろぼう学校の話
タイトル:『どろぼうがっこう』
内容:山また山の村はずれにあるどろぼう学校では、校長先生が 「なにかどろぼうをやってこい」という 宿題を出します。でも、生徒たちのどろぼう行為は、先生が期待していたものとは全然違って大激怒。ある夜、見本をみせようとどろぼう学校の生徒をひきつれた先生がやってきたのは、街で一番大きな建物。でもそこは…!!
この話も最初は、論文の下書きの裏に墨一色で書いたものだったといいます。簡易の紙芝居だったのでしょうか。
でも、子ども達は大喜びをしたのだそうです。かこさんのコメントがあります。
たとえ素朴な絵であっても、起承転結があり、人間がきちんと描けていれば子ども達の心に届くということを痛感しました。
2020年八王子にて開催された「かこさとしの世界展」における『どろぼう学校』原画の説明書きより
「よくねむれ、よくぬすめ」の挿絵など、「え、大人がこんなこと言っていいの!?」という驚きも、どろぼう達のちょっとマヌケ具合も面白くて、私の大好きな一冊です。
③『だるまちゃんととらのこちゃん』
タイトル:『だるまちゃんととらのこちゃん』
内容:ある日、だるまちゃんとペンキ屋さんの子のとらのこちゃんは、町中をペンキで落書きして回ります。それを見た町の人は…!?
どろんこやいたずらがきは大人からは嫌えんされるような遊びですが、かこはそういった遊びが子ども達の好奇心を掻き立て、学びや挑戦の原動力になると考えていた。
~2020年八王子にて開催された「かこさとしの世界展」パネルより書き写し~
④『からすのパンやさん』
タイトル:『からすのパンやさん』
内容:からすのパンやさんの家に四羽のあかちゃんが生まれました。このお父さんもお母さんもあかちゃんのお世話で忙しく、だんだんお店が散らかってお客さんが減ってしまいます。でも、子ども達は元気に成長しました。そして、みんなで考えて、たくさんのパンを作ると美味しいパンのことが口コミが広がって…。
お話終盤で、カラスたちが多数集まってくるところでも、一匹一匹違うカラスが登場します。よく絵を見てくれたら嬉しいと、かこさんはいいます。そこには一匹ではない、仲間同士の助け合いや多様性が描かれています。
美味しそうな、ユニークな形や名前のパンを眺めているだけでも、とっても楽しい絵本。
今度は、登場人物にも目を向けて楽しみたいですね!
【科学絵本】伝えたかったメッセージの数々

①『だむのおじさんたち』~人とダム
タイトル:『だむのおじさんたち』
内容:やまおくにダムをつくる作業員たちに着目して描いた話。測量に始まって、大がかりな工事を雨の日も雪の日も命がけの工事行って完成させます。
子どもと大人の世界を隔絶させないで、おとうさんおかあさんたちの今の生活を、考えを、子ども達に知ってもらいたい。知らせたい。
『だむのおじさんたち』裏表紙
工学部出身のかこさとしさんのデビュー作です。
完成する前と後では、完成後に色を加えるなどコントラストを作って世界が変わった様子を表していることにも着目してください。描きなおしたそうですよ。(後述の「かこさとしの世界展」では、その下絵を見ることができました。)
みんなのために命をかける作業員に対して、感謝の気持ちを持ちます。
裏表紙の言葉も奥深いです。
②『かわ』~川と人の関わり
タイトル:『かわ』
山に降った雪や雨が谷川となって川に流れ込み、途中ダム等を経由しながら、平野では大きな川となって、やがて海へと流れていく。その過程で、発電や田んぼに水を惹いたり、水遊びをしたりと、人間の生活と切っても切り離せないことを伝えている。
1962年から長く愛されてきたこの『かわ』ですが、山から海に川が流れる様子をアコーディオン(絵巻)のような連続した絵でみることができるタイプが2016年に登場しました。少しお値段は張りますが、待ち望んでいたファンも多いと聞きました。
③『海』『地球』『宇宙』~人を囲む壮大なもの
タイトル:『海』『地球』『宇宙』
内容:今なお、完全に解明されていない謎多き、海、地球、宇宙に関する3冊。
専門家の話を織り交ぜながら、人間がどのようにかかわろうとしてきたか、そしてそれでも解けない「私たちを取り囲む壮大な神秘の世界」について触れることができる絵本。
かこさんは、科学絵本を作る際には、「①大事な原則を伝えること」と「②他分野との関わり合いの中で総合的に表現すること」を重視したといいます。
「20年後の未来にも通じる正しい知識」を少しでも伝えたいと考えていたそうです。その結果、今なお残る絵本となっているのでしょう。
④『なんだかぼくにはわかったぞ』~身近な実験を楽しむ
タイトル:『なんだかぼくにはわかったぞ』
内容:たろうさんのポケットに入っていた木、鉄(釘)、石、プラスチック(の鉄砲)の4つを使って、「モノの見分け方」のテストをしていきます。水に浮くのは?叩いた音は?磁石に引っ付くのは?静電気が起きるのは?そして、何で出来ているか見た目では判断できない「くまちゃんの人形」を順にテストして、何で出来ているか調べていきます。
科学の世界では、仮説を立てて、実験して…というのは当たり前のことですが、実際に子どもの世界にこれを落とし込んで分かりやすい実験をしているところが面白いです。この本のシリーズがそうなのですが、自分でもやってみて!と言わんばかりです。
かこさんらしい、とても面白い科学絵本。
夢中になる子は本当に夢中になって読みそうな一冊です。
⑤『みずとはなんじゃ?』~かこさんの遺作
タイトル:『みずとはなんじゃ?』
内容:液体、気体、固体になる水。人間や動物の身体の中にあって、生きていくのに必要な水。海や川にたくさんあって、地球を守ってくれている水。身近なところにある「水」から地球という大きな話にまで発展していきます。そして、環境汚染による危機的状況にある現在と、「水」を守る必要性についての話にまで言及された絵本です。
この本はかこさんの遺作となりました。
2016年にプロジェクトが始動し、2018年3月にかこさんによって文章と下絵が完成しました。しかし、かこさんの体調悪化のため、絵本作家の鈴木まもるさんに絵を描いて完成させてもらうこととして同年5月、かこさんは亡くなります。その後、鈴木まもるさんの手によって完成され出版されたのが本作です。
絵本の中に、かこさんやキャラクターが出てくると話題にもなりましたよ。
「かこさとしの世界展」にて

こどもは みらいのせかいにいきるひとです
だるまちゃんより 2014 かこさとし ~2020年八王子にて開催された「かこさとしの世界展」パネルより書き写し~
だから、からだとこころをきたえ
こまったことを きりひらく
かしこいちえを たくわえ
かんがえを ふかめてゆくよう
あなたも わたしも つとめましょう
現在、八王子市で開かれている「かこさとしの世界展」が開かれています。
セツルメント運動で子どもに教えていた絵への評価コメントや、絵本の原画、下絵の一部も公開されています。
かこさとしさんの絵本を椅子に座って読めるコーナーも展示場内にありました。
Tシャツやコップ、ぬいぐるみ、絵本などかこさとし作品のグッズも販売されています。

世界展の入口付近には、かわいい絵本キャラクター達との記念写真スポットもあります。
正面のだるまちゃんには、
鈴木のりたけさんや
ヨシタケシンスケさんのサインも発見しました♪
興味がある方は、足を運んでみると楽しめると思いますよ!
かこさとしの世界展
2020年2月1日(土)~4月5日(日)
場所:八王子市夢美術館(公式ホームページはこちら)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館し、翌日休館)
入館料:一般600円、学生(小学生以上)及び65歳以上300円
(未就学児無料、土曜日小中学生無料)